おだやかな日々に

万葉故地見学・土屋文明記念館

菜の花

  国分寺を出てバスに戻る道すがら、目の覚めるような菜の花が咲いておりました。お天気ははっきりしない曇り日ですが、靄がかった曇りで、体中靄につつまれたような優しい空気。東京では味わえない一寸不思議な感覚でした。


文明記念館を望む
 文明記念館は随分前に一度訪れた事がありますが、交通の便が悪くバスの時間を気にしながら、後ろ髪をひかれるようにして帰った記憶があります。今回は、土屋先生の南青山のお宅の庭から移された橙の木がどんな様子になっているのか、まだ実がなっているのか、是非確かめたいと思って参りました。周囲が公園のように整備されて随分美しい環境になっていて驚きました。


かくのこのみ いつの間に落ち尽したる古き実か橙は皆高く新し
 足重く頭の利かぬ一日を見てゐる窓の外の橙
 尿にごり年の界を幾日寝し立ち見る橙の色づきにけり
 橙の花降る下にしばし立つこのたちばなに思い出もなく
 窓に下がる橙を見るものにしていくらかの稼ぎ雨の日も過ぐ


黄にかはる橙ひとつ窓にして何もせぬ日ぞ安けかりける
ただ一つ下がれる去年の橙あり木の実は孤独といふこともなく
花の時いつのまに過ぎし立花の香と言ふ朝もなき今年なりき
幾つありし香の木の果か何時の間に一つとなりし香の一つ果
窓の外下れる木の実は年を越え降る日は落つるしづくも見ゆ
時をわすれ実のりし枝に長かりし香の木の実も遂に落ちたり
年のなかば窓の橙を友として交り少きわが世すぎゆく
小市草子著 「かぐのひとつみー父文明のこと」 より
記念館の学芸員さんに伺ったところ、「ええ、まだ実がなってますよ」と言われて見上げました。
土屋先生が書斎の窓から眺められた橙の木は思っていたより随分丈が高く、ズームで何とか梢の「かぐのこのみ」を写す事が出来ました。
紅梅
 培ひて三年ととのふ紅梅の枝をたのみて年を迎へむ
 梅の枝に梅のつぼみの目にたつも出でて歩める今のよろこび




方竹

 方竹の子の伸びること遅くして軒に届ける穂を切りはなつ
 いつの時も頼み少なく過ぎて来しわが老をまもれ方竹の影



この他に椿、トサミズキなどが咲いて居りました。記念館で頂いたパンフレットに依れば41本の樹木が植えられているそうで、今回ももっと時間があればと残念でした。
歌碑 「歌碑は群馬町町長の志村喜三郎氏が、自ら長靴を履いて現地の自然石を探し、建つことになりました。背後に榛名山を望む「やくし公園」の一画です。父が「いいよ」と言った唯一の歌碑となりました。
今でも、この歌碑の前に立つ度に、私にはあの時の父の心情が思い起こされます。そして刻まれた歌のこころを思い、じっと見ていると、何か痛ましい、悲しい気持ちになってきます。」 小市草子著 「かぐのひとつみー父文明のこと」 より

「出発ですよ~」の声を聞きながらこの歌碑まで走って行き写真を撮りました。
いちめんのなのはな
 土屋先生の歌碑の手前に山村暮鳥の「なのはな」の詩碑がありました。いちめんのなのはなはどんなにか素晴らしいものだった事でしょう・・・とゆっくり考える暇なく、急いでバスに乗り、惜しみつつ記念館を後に致しました。 つづく








  1. 2014/03/31(月) 22:24:53|
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:3
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コメント

素晴らしい紀行文、雲さんの感動がみずみずしく伝わってきました。土屋文明氏のことは何も知りませんでしたので有り難く面白く読みました。橙の木によせてあれだけの歌が詠めるのですね。歌はいいですねそして難しい、なによりも続けるのが難しい。

折々の記録や感慨をつくって残せれば生の軌跡になりますね、雲さんの歌集をお待ちしています、まだ私の心が感応できるうちにお願いいたします。
  1. 2014/04/01(火) 05:21:35 |
  2. URL |
  3. わかめ #Wvcannqs
  4. [ 編集 ]

もう一言。山村暮鳥の「なのはな」は先日学童保育のこどもたちと一緒に読みました、読み聞かせのお仲間が用意したのを子どもと一緒に大きな声で読んで楽しかったので、ひとこと。
  1. 2014/04/01(火) 05:26:25 |
  2. URL |
  3. わかめ #Wvcannqs
  4. [ 編集 ]

わかめさん、嬉しいコメントを有難うございます。
わかめさんやサイコさんがされている読み聞かせは子供たちの情緒を深めるのにとても良い影響を与えているそうですね。孫たちも保育園や学校や学童保育で恩恵を頂いているようで、先日「まどみちお」さんが亡くなられた時「うん、知ってるよ」と即答しましたので、有難い事と思いました。

今度のバス旅のお蔭で暮鳥の詩碑に出会えた事も嬉しい収穫でした。

今満開のさくらがやがて散る日を思いながら「まどみちお」さんの詩をひとつv-252

えだを はなれて
ひとひら

さくらの はなびらが
じめんに たどりついた

いま おわったのだ
そして はじまったのだ

ひとつの ことが
さくらに とって

いや ちきゅうに とって
うちゅうに とって

あたりまえすぎる
ひとつの ことが

かけがえのない
ひとつの ことが
  1. 2014/04/01(火) 10:42:04 |
  2. URL |
  3. 雲 #mQop/nM.
  4. [ 編集 ]

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