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おだやかな日々に

なくてぞ人は 1

 ある時はありのすさびににくかりきなくてぞ人は 恋しかりける

 母は身内や友人が亡くなるとこの歌をよく呟いていた。特に学問がある訳でもない母がどうしてこの歌を知っていたのかと聞いた事も無かったが、どうやら源氏物語の桐壺の中に出てくるらしい。と、これはインターネットで検索して判明したこと。

 私がありのすさびに憎かったのは私の長兄である。憎いと言っても、殺したくなるような憎さではなく、肉親に感ずるある種の憎さであったが、自分が兄の亡くなった年齢に近くなってきた最近とみに、「亡くてぞ兄は恋しかるべき」存在となってきたようだ。

 兄は73年の生涯に1冊だけ歌集を残して逝った。その兄の残した歌集を繙いて、兄の心の内を私の心に取り込んでみたいと思った。兄の歌集、「無影燈」は敗戦直後の昭和20年に始まる。

朝戸出の麦播く吾を呼びとめて宗観和尚柿を賜びたり
大学を卒へて今日ある吾なれどあはれ一個の労働力にすぎず
良寛の文字に対ひてしきりにも枯れ木の枝を思ひゐたるよ

柿を賜びし宗観和尚が兄の初めての短歌の師匠であった。
目玉のギョロリとした姿勢の良い恐そうな和尚さん、笑うと急にその時だけいたく可愛い顔になった。空襲で家を焼かれた我が家は一家で浜松近郊のお寺の本堂の横の二間続きの部屋に居候していたのであった。

食料の足しに何処かで麦でも作っていたのであろうか、子供であった私の知る由も無い事であった。

 
  1. 2006/03/04(土) 23:25:00|
  2. 短歌など
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
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コメント

なくてぞひとは...

また始まりましたね。およしワールド。
ここへ来る楽しみが増えました。
  1. 2006/03/06(月) 17:00:17 |
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  3. サイコ #-
  4. [ 編集 ]

こにゃにゃちわ

最近ブログを見まくっているICAです。http://jump.sagasu.in/goto/blog-ranking/を見ていたらこの記事が紹介されていたので、見にきちゃいました☆また見に来ます!
  1. 2006/03/06(月) 17:16:07 |
  2. URL |
  3. LICA #-
  4. [ 編集 ]

はじまり

サイコさん。かけ声を頂きありがとうございます。指がどんな具合に動いて行くのか、私、し~らない^^;
  1. 2006/03/06(月) 21:49:00 |
  2. URL |
  3. 雲 #-
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