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おだやかな日々に

なくてぞ人は 3

老梅
戦災で焼け出されて不自由な暮らしではあったが、兄の短歌を見ると、それでも当時の若者の夢や活力のようなものが感じられる。

 アミの子が無尽数の命かなしくも水の青さにただよひて居り
 歌詠まむ心油然と湧き来るは食欲に似てたのしくもあるか
 オートバイにて東海道を馳せむ事空想しつつ人に語らず

食料の足しにでもするためか、或いは楽しみにか多分浜名湖あたりに釣りにいったのではなかろうか。アミの佃煮など記憶に残っている。オートバイで東海道を走ったかどうか知らないが、後に兄は良くオートバイに乗っていた。

 血を分けしその事がすでにのっぴきならぬ憎しみになるとこそ言へ
 怒りつつもの言へどやがてはかなくて次第に常の口調にかへる
 生活に深さも広さもなくなりて時折思ふ旅する心

肉親憎悪の事が先刻当のご本人の短歌に出てきた。一体対象は誰であったのか。字余りにしてまで歌に詠んでいる。

兄が旧制高校時代、帰省すると我が家にはピリピリした空気が漂った。
母が奥の部屋で勉強?している兄にお茶を持って行けと私を使う。
恐る恐る襖を開き、
「兄ちゃん、お茶」と差し出すと、珍しく機嫌良く「ダンケ」と言った。嬉しくなった私はバタバタと母の所に行き、
「おか~さん、兄ちゃん、ダンケだって。」
すると次の瞬間、「Y子ぉっ!」と恐ろしい兄の声。
「余計な事を言うなっ!」

この事が兄へのトラウマになって一生あの手の人が苦手になってしまった。だから私は兄が憎いのである。兄には兄の理屈があったのであろうけれど。
  1. 2006/03/17(金) 22:56:32|
  2. 短歌など
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5
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コメント

邦子の世界

雲さんとっても素敵な文を有難う、まるで向田邦子の世界ね。
情景も目に浮かびます、映画になるわね。
こんな友人を持って私は幸せだわ~。
  1. 2006/03/18(土) 19:41:31 |
  2. URL |
  3. bajiru #mQop/nM.
  4. [ 編集 ]

浮かびます、情景。そしてお兄様の若々しい感受性。
それにしても雲さんに繋がる文学の香りです。
昔の長男はそうでしたね。
大切にされて横暴になったり、
押しつけられた責任感にいらだったり。
(お手を覚える気もなくて)
私の兄はマザコンになり、しっかりものの(?)妹に寄りかかって生きています。愛憎こもごも。
  1. 2006/03/19(日) 07:42:32 |
  2. URL |
  3. わかめ #gGsLOqyI
  4. [ 編集 ]

男兄弟が居なっかったので、お兄ちゃんと言う響きに憧れていました、3人姉妹はつまらないわ、細雪の4人姉妹やオルコットの若草物語に様に個性的な姉妹でもないし・・
父がよく「どんぐりの背比べ」と言ってました、でも「どんぐり」だから仲だけはいいのかも・・
  1. 2006/03/19(日) 11:22:38 |
  2. URL |
  3. bajiru #-
  4. [ 編集 ]

私も兄を思い出しながら読みました。母との葛藤も、きっと気質がそっくりな部分をお互いに判っていたからなのでしょうね。

 時折思ふ旅する心...  まさにその思いです。
  1. 2006/03/19(日) 20:23:44 |
  2. URL |
  3. サイコ #-
  4. [ 編集 ]

bajiru さん、わかめ さん、サイコさん。コメントをありがとうございます。喜んでまた調子づいてしまいますよ(^^;) 何処のご家庭にも何らかの形で肉親との一寸した軋轢はありますよね。私の場合は年が非常に離れていたので、一方的だったのが未だに癪の種(^^)です。
bajiru さんのところは3姉妹なんて、こちらこそ羨ましい。さぞかし華やいで楽しい毎日だったことでしょうと想像致します。
  1. 2006/03/19(日) 20:34:03 |
  2. URL |
  3. 雲 #-
  4. [ 編集 ]

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