おだやかな日々に

蓼科高原と下諏訪 3

赤彦居宅への道
この道を行けば柿蔭山房ですよとタクシーの運転手さんが教えて呉れた細道は少し上り坂であった。向こうに小山があり、手前の家の庭が借景で素晴らしいと思ったら、そこが赤彦の家、柿蔭山房であった。赤彦の家
敷地に一歩足を踏み入れた途端にすがやかな気持ちになったのはどっしりとした藁葺き屋根と大木の緑のせいであろうか。


胡桃の木

ある日わが庭の胡桃に囀りし小雀来らず冴えかへりつつ    赤彦
夜おそくわが手を洗ふ縁のうへに匂ひ来るは胡桃の花か    赤彦
門の傍らに胡桃の大木があった。そこに詠われた木があるという事が、何か不思議な気がする。 そんな不思議に幾つか出会った。 
赤松
この赤松は樹齢300年ほどだそうだ。初めて見るような立派な大木で本当に四方に枝を伸ばしていた。
赤松の枝
義姉と雲だけの静かな時、管理人の姿も見えない。まぶしいほどの日が差して庭に木草だけが能弁であった。

藁屋根
伸びた赤松の枝の向こうに藁葺き屋根がどっしりとして見えた。廊下にはカーテンが掛けられて、客室と居室の一部が開かれ、そこから内部が見えるようになっていた。右側の八畳くらいの部屋には赤彦終焉の部屋と書いた立て札が立っていた。
水屋
裏手に廻ると水場であった。そこにも赤彦の短歌が書かれた立て札。記念館で手に入れた赤彦の歌集「氷魚」(ひを)をぱらっと見ると目次に「病床」という箇所があるが、この立て札の歌は大正15年であるから「氷魚」の時代よりずっと後、最晩年の歌だ。
井戸
桑の葉の茂りをわけて来りけり古井の底に水は光れり   赤彦
顔洗ふ子は知らず居りひっそりと井戸をめぐりて虫ぞ鳴くなる   赤彦
ヤブレガサと花
赤彦が好んだ植物かどうか、庭のかしこにさまざまな草木が場所を得て茂っていた。久しぶりにヤブレガサに出会った。蕾をつけていたが、どんな花が咲くのであろうか。
サクラソウと翁草
涼やかな白い花には「サクラソウ」と名札がついていた。おとなりはすっかりほほけたオキナグサである。
赤彦追慕
無人の柿蔭山房をぐるりと一回りして振り仰ぐと藁葺き屋根の上には諏訪の空。白い雲が流れていた。
山房を出て山猫亭で蕎麦の昼食、それから今井邦子文学館に行こう。


  1. 2008/06/09(月) 23:06:42|
  2. 短歌など
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:7
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コメント

ああ...

どうして こんな香り高い文章が書けるのですか!
選び抜かれた写真と共に、もう純文学ですね。
  1. 2008/06/10(火) 12:34:10 |
  2. URL |
  3. サイコ #ZeC0G1NE
  4. [ 編集 ]

またぁ~・・・

サイコさま、 赤面コメント感謝(赤面しつつコメントに感謝致します)
陳謝未読ブログ(何だか毎日忙しくて皆様のブログめぐりが出来ないでおります。色々とノロマになりました^^;^^; )
  1. 2008/06/10(火) 14:38:16 |
  2. URL |
  3. 雲 #mQop/nM.
  4. [ 編集 ]

雲さまの格調高い文と写真に何をコメントしたら良いのでしょう、ああ私ももっと文学をお勉強しておけば良かったです。
写真も素晴らしくこれこそブログ文学ですね。
良い物を見せて頂きました。
  1. 2008/06/10(火) 18:15:51 |
  2. URL |
  3. bajiru #mQop/nM.
  4. [ 編集 ]

豊かにゆったりと

いいですねぇ、ご一緒にひっそりと旅をしている気分。
そうそう、ブログ文学です。
お天気にも恵まれ、お義姉さまとのゆっくりした時間の中で二人の歌人を訪ねる旅読ませていただけて有り難うございます、まだ今井邦子文学館ですね、楽しみです。
  1. 2008/06/10(火) 22:57:12 |
  2. URL |
  3. わかめ #gGsLOqyI
  4. [ 編集 ]

アララギにつながる者としては知っておかなければならなないはずの島木赤彦。とはいえ知らないでいる私ですが…。とても興味深く拝見しています。こういう旅をしてみたいものです。(^^)
代表作を調べていたら
 月の下の光さびしみ踊り子のからだくるりとまはりけるかも
これは 『切火』からで「氷魚」の前みたいです。「氷魚」のあとの『太嘘集』からは
 みづうみの氷は解けてなほ寒し三日月の影波にうつろふ
三日月に反応するわたしですが、いずれも古典文学としての短歌の風格を見るような感じです。
自分にも人にも厳しかった赤彦がいいも悪いもアララギのひとつの方向を作ったのは宜なるかなと伝わります。古きを知ることによって得るものは、私には新しいです! ありがとうございます(^^)
  1. 2008/06/11(水) 01:18:38 |
  2. URL |
  3. take #5RIkxCRk
  4. [ 編集 ]

明日からは・・

bajiruさん、わかめさん、お優しいコメントを有難う御座いました。たった1泊でしたが、こんな旅も悪くないなぁと思いました。気軽にあちこち出来たら楽しい事でしょうね。今日で小さな旅はおしまいです。あすからはゆっくりブログ巡りです。
  1. 2008/06/11(水) 22:40:05 |
  2. URL |
  3. 雲 #mQop/nM.
  4. [ 編集 ]

ゆらぎや乱調子・・・

take ちゃん、嬉しいコメントをありがとうございます。早速歌集をあちこち調べられるなんてぇ~と。やっぱりえら~~い。
『「氷魚」は前歌集の「切火」に見られる感傷や才気がなくなり、その乱調子は影をひそめて質実な写生歌でしめられることとなる。ゆらぎにはやや乏しいが引き締まった歌調で、いわゆる赤彦調の確立がここに見られる』とのことです。
先日の東京歌会で、H氏の「括られし赤彦全集4千円・・・・・」の歌に暫し歌評が留まったのは、やはり赤彦ゆえなのでしょう。雲はもの知らずでただ黙ってました・・・^^; 4千円で全集が買える!とは。
ゆらぎや、乱調子の歌を読んでみたいですね。
  1. 2008/06/11(水) 22:55:41 |
  2. URL |
  3. 雲 #mQop/nM.
  4. [ 編集 ]

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