おだやかな日々に

コンクリートの壁

 コンクリートの壁にはただ一つ狭き口声なき諸声が招きやまずも
 雪原の塩田平を見はるかしどの画も無言ああ無言館        
                                   小市巳世司
  
この短歌を読んでから一度行ってみたいと思っていた無言館を訪れる事が出来ました。
下の文章以上の言葉を知りません。

あなたを知らない

遠い見知らぬ異国で死んだ 画学生よ
私はあなたを知らない
知っているのは あなたが遺したたった一枚の絵だ

あなたの絵は 朱い血の色にそまっているが
それは人の体を流れる血ではなく
あなたが分かれた祖国の あのふるさとの夕灼け色
あなたの胸をそめている 父や母の愛の色だ

どうか恨まないでほしい
どうか咽(な)かないでほしい
愚かなわたしたちが あなたがあれほど私たちに告げたかった言葉に
今ようやく 五十年も経ってたどりついたことを

どうか許してほしい
五十年を生きた私たちのだれもが
これまで一度として
あなたの絵のせつない叫びに耳を傾けなかったことを

遠い見知らぬ異国で死んだ 画学生よ
私はあなたを知らない
知っているのは あなたが遺したたった一枚の絵だ
その絵に刻まれた かけがえのないあなたの生命の時間だけだ


           窪島 誠一郎
             一九九七・五・二(「無言館」開館の日に)


  1. 2012/11/23(金) 11:17:29|
  2. 美術
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

言葉を失う...

無言館は3度行きましたが、こんな紅葉の美しい季節を知りません。やはり寂しくて切ないですね。
出征した画学生や夭折した画家たちの魂の声が聞こえてくるようです。
絵などが劣化しないように、そして多くの日本人の目に触れるように守っていきたい財産だと思います。
  1. 2012/11/24(土) 11:07:52 |
  2. URL |
  3. サイコ #ZeC0G1NE
  4. [ 編集 ]

一編の映像詩

無言館の映像、じっくりと拝見させていただきました。
秋の終わりの風情漂う道をゆっくり辿って無表情に見える無言館へ。装飾のない入り口、並んだ小さな格子縞は学生たちの名前でしょうか。お母さんらしい、自画像らしいいくつかの絵に見入りました。
突き抜ける空の下にたたずむ美術館を出て重い心のままに映る冬枯れの林、俯きがちに歩く人々、映像が終わり最後の白紙の一枚が彼らを思わずに過ごした年月を表しているようです。
どうも有り難うございましたm(__)m
  1. 2012/11/24(土) 13:44:37 |
  2. URL |
  3. わかめ #gGsLOqyI
  4. [ 編集 ]

サイコさん、3度も行かれたのですか?
バスの時間を気にしないでもっとゆっくり居たい所でした。
団体で来た方達も館内ではみなさん無言になって・・・・
あの世代の方々はもう90代でしょうか。
コメントを有難う御座いました。
  1. 2012/11/24(土) 13:45:25 |
  2. URL |
  3. 雲 #mQop/nM.
  4. [ 編集 ]

わかめさん、心に沁みるコメントを有難う御座います。
美しい紅葉に間に合って幸いでした。
新幹線のお陰で日帰りで行く事ができましたが、許されれば
一晩泊まりで池波正太郎の「真田太平記」に出てくるという
上田城も見学したかったですv-235 
チャンスがあればまた・・・
  1. 2012/11/24(土) 13:56:48 |
  2. URL |
  3. 雲 #mQop/nM.
  4. [ 編集 ]

語りかける絵

10年ほど前、学生時代のグループ5人で一頻り戦争を考える旅を続けた事がありました、広島の原爆資料館を訪ねたり、上田市の無言館を訪ねたり・・絵を始めた頃で無言館での印象は未だに新鮮に蘇ってきます、年老いた母親を描いた絵、家族全員を描いた絵、出征前夜恋人の姿を寝ないで描いて残した絵など友達と涙を拭きながら見ました。
二泊三日の旅、どの経路からどう上田市へ入ったのか全く覚えていないのですが、この無言館が旅の最後でした。
帰京後窪島 誠一郎さんの講演を聴きに行ったりもしました、無言館を作ろうと思った事、未だに戦没画学生の絵を探していること、その時は父親の事に付いても語っておられたのを思い出しました。

  1. 2012/11/25(日) 00:31:10 |
  2. URL |
  3. bajiru #mQop/nM.
  4. [ 編集 ]

bajiruさん、コメントを有難う御座います。
戦争を考える旅、私も広島、長崎、をいつかはと思いながら、未だ果たして居りません。
沖縄の旅でも、敢えて戦跡は訪れませんでした。物見遊山の序でに行くのは嫌でしたから。
bajiruさんはお友達と良い時に行かれましね。

秋の塩見平はとても絵になる所でした。
bajiruさんだったらきっと沢山スケッチなさった事でしょう。
  1. 2012/11/25(日) 20:26:32 |
  2. URL |
  3. 雲 #mQop/nM.
  4. [ 編集 ]

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